僕はピザの宅配人だった。

その日も高崎を西へ東へとピザをばらまいていた。

それは8時頃の事だった。

入り組んだ道の奥まったところにある、

少し雰囲気のいい大きめな家に

ピザを届けた後だった。

愛車ジャイロX(金田仕様)に乗り込み、

ヘルメット(成田山)を被ろうとした。

すると、学生服を着た中学生が、目の前を歩いていた。

後ろから、やはりジャージを着た中学生が自転車に乗ってやってきた。

突然、ジャージ君が学生服君を髪の毛を掴み、

自らの顔へと近づけ、何か言いだした。

(いじめだ!!)

僕は悟った。

かすかに「おまえ分かってんのかよぉ」と聞こえる。

僕の中の僅かな正義感がチリチリと燃え出す。

僕は“いじめは社会が無くす”のレポートを頭の中で

数行書き上げてから、彼らに声をかけようとした。

レポートは第二段落で“キレる14歳”について書き出し始めていた。

(やばい!!やつらは14歳かもしれない。)

暗くて顔がよく見えない。

僕の前頭葉が喉へと指令を発していた。

必死のキャンセルボタンの連打も空しく、

むしろそれが僕の喉を絞り上げた。

「ぉほぉイっ!!」

(声が裏返ってしまった!!)

全身の毛穴から汗が噴出す。

(しまった!!スカウター忘れた!!)

やつの戦闘力が分からない。

すごいヤンキ−でナイフなんか持ってた日には、

戦闘力は跳ね上がる。

今の僕にスーパーサイヤ人の壁は厚い。

とりあえず僕は目の下の血管をピキピキといわせながら、

ガンつける努力をした。

(ピキピキいわないっ!!)

せめてヘルメットを持とう。

ピキピキいわなくてもヘルメットで雰囲気は察してくれるはずだ。

僕は前頭葉の空しい指令の結果、目の下の涙袋をプルプルいわせながら、

彼らに歩み寄った。

(震えるな、足っ!!)

いつのまにか、レポートは遺書へと変わっていた。

(さよなら、お父さん、お母さん。)

最後はこれで締めよう。

覚悟は決まった。

僕はこの寒空の下、14歳のアーミーナイフに刺されて死ぬ。

僕の死体の上には雪が降り積もるだろう。

今は降っていないけど。

その時、学生服君が歩み寄ってきて、言った。

「兄です」

(!?)

確かに二人は似ている。

「○○さんちはどこですか?」

彼らは知らない。

僕はジャイロXにまたがった。

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